34.『闇』の中の月光

Pocket

※ヨシ視点

ランとグレイスはこっちに真っ直ぐ来ている。オレもグリフに乗れば合流確実。

他の連中を『予言』するか。

ユウは・・・・・・、なんだ。寝てるだけか。『英雄』ヘラクレスを倒したみたいだな。アイツも深手を追ってる。寝かせとくか。

ケイは、一旦、距離を取ったのか。それがBest。次元の操作は次元違いの能力。

一番、ヤバいのダイス。闇に堕ちたな・・・・・・。目が虚ろ。『精神汚染』だな。ハデスの『精神汚染』は、コウシンの持つ『ケリュケイオンの杖』の比では無いという話・・・・・・。ハデスがコソコソ何かしてる。早めに行かなきゃまずい。冥界のハデスの宮殿ね。

◆◆◆◆◆

ランとグレイスと合流。皆の『予言』で視た状況を伝える。ダイスがヤバい。精神汚染の後に、ハデスが何をしようとしてるか視た。

殆どの血を抜き取り、後は傀儡にする。ハデスが持ってる人形は、恐らく怪物達のなれの果て。『海洋の王』ポセイドンを操りきる自信があるのか?ダイスだからこそ、制御出来ているんだぞ?あの力は。まずい。何か、方法を考えろ。ハデスの宮殿は、次元違いの場所だ・・・・・・。

グレイスの能力、ランとオレの精霊能力、治癒能力。無のナイトと精霊の主マクスウェルを使えるか?・・・・・・・・・・・・ランが相当危険だな!?

「ラン、グレイス。ダイスを救うぞ。オレ達の能力で出来ることがある。オレの精霊、無のナイトは幻影や精神を守る力がある。マクスウェルは次元を超えれるはず。どうだ?ラン。精神汚染に効く薬を持たせる。少し意識を戻してから、飲ませれば精神汚染はとけるはず。グレイスの能力で言葉を送れるだろ?オレが居れば、その力は数十倍に跳ね上がる」

「ヨシ!!マクスウェルは大丈夫だよ。二人の顔を見ればわかる。僕が心配なんでしょ?僕が適任だ。ダイスには、いつも助けて貰ってるからね!今度は僕が守る!!」

「その覚悟、本物。無のナイトよ、ランを守護しろ。光のルナ、影のシャドウよ、お前等も行け。彼処は闇だ。お前等の活躍の場。ランとマクスウェルに従え、ダイスに光を」

「私が二人の感情と声を届けるわ。ヨシがいるなら、ダイスの意識は少しはマシになりそうね。ラン、私からは、この『黄金の林檎』を渡して置くわ。この冥界で、星を使った技を使う時に役立つわよ。私の『星』の能力が宿っているわ」

「Shake it! We’ll be late!!ハデスがダイスの体に文字を書き始めてる。届けるぞ! Our Emotions!!」

グレイスを中心に手を繋げる。精霊達と薬をランに託す。後は、ダイスの『意識』を少しでも覚醒させなければな。薬の意味はなくなる。

「ダイス!!僕だよ!ランだよ!――駄目。届いていない・・・・・・」

ラン、悔しい顔して、泣いても何も変わらねーぞ。

『音』の能力よ。届けるぜ!Loud sound& Emotions!!

ハデスが感づいたようだな。気配を探知している。そんな所からじゃわからねぇよ。

Hey!!ダイス、耳の穴、かっぽじいて、よく聴きな。

そっちに送るぜ。Night Run。Luna and shadow。

お前の大事なランが泣いてるぜ。

はじめて今思えるぜ!?

隣にいてくれて良かったbaby

Come on!

関係ないね。流れも何もかも

でもノリはキモかも、それがすべての中心になる。

お前は今、中心点にいる。

Come on!!

さも抽象されても

求心から引き寄せられた大きな流れなのかも

負けず嫌いだろ?ウズウズするだろ?大きな流れと渦を生み出せ!!

Come on!!!

そして、それはお前自身の

思考となり

行動となり

四六時中お前の隣

這い上がれ!

駆け上がれ!

成り上がりのパワーを見せつけてやれ!!

悔しさ噛み締め

明日も明日もと言いながら床に着くなよな。

そんな陰気くせぇの要らねぇよ。

Come on!!!

さぁ、ダイスよ

いつもの様に、酒に酔って

月の女神の様な美女に喜べ!!

勝利の酒の極みを見せてみろ!!

その時、交わそう、盃を。

――――頼むぜ。Big Brother。

精霊達とランがダイスの元に行く。

ラン、負けるな。燃えてみろ!!

◆◆◆◆◆

※ダイス視点

オレは、人間だったようだ。友達の声が心に届いた。ダイスというのがオレという人間なんだろう。

心地いいな。何故だろう?

この温もりを知っている。優しい温もり。

髪の色も知っている。銀に煌めく可憐さと、淡い緑のコントラスト。

月の光を纏ったような年若い女神。何で、涙を流してるんだ?

月の女神の詩。意識を揺さぶる、天国の音色。――この声を知っている。

――――接吻。

口から飲まされた甘い薬・・・・・。血液に混じり、体の一部になる・・・。

どうやら、月の女神はオレに用があるようだ。必死に名を呼んでいる・・・・・・・・・。

「・・・ィ・・ス、ダイス!・・・僕だよ。ランだよ。目を覚まして!お願い!!」

徐々に意識が戻って来る。

そうだ・・・、オレはダイス。コイツはランだ――。

――オレが守るべき存在。

――見間違いじゃない!

今、ココにランがいる。泣きじゃくってるじゃねーか・・・。

――オレ、何を。

そうだ。そう、ハデスと戦っていた。

まさか一撃で意識を刈り取られるとは思っていなかった。

精神的油断があったんだな。本当に救いがたい。

ハデス・・・。アイツは最悪な強さ、――恐怖心を植え込まれた。強すぎる・・・。

二人とも、殺される。早く、逃げなきゃいけない。

守らなきゃ、守らなきゃ。守らなきゃ。守れなければ、オレには絶望しか残らない。

「ラン、意識が戻った・・・・・・。ありがとう。オレは、ハデスに敗れていた。駄目だよ。勝てない。・・・・・・逃げなきゃ。ハデスは、アイツは・・・・・・オレより強い・・・・・・。二人共、命を取られて、玩具にされるぞ!!!」

『パシーン――』

「自分を駄目だと思わないで!直ぐに諦めないで。足掻いてよ。そこがダイスの悪いクセ!!僕は、ハデスを許さない。強いかどうかなんてカンケーない!!」

ランは本気だ。頬を叩かれた。ヒリヒリする。

「戦わなきゃ駄目な時だってある。僕は決して逃げない。ケイ達にだけ戦わせるの!?都合のいいときだけ、兄貴分!?僕はダイスの事を信じてる。ダイス以上に!!!!!」

言葉が出ない。コイツの言うとおりだから・・・。

ハデスが歓びに満ちた顔をして、コッチを見ていた。

「意識が戻ったのか。ダイス。お前は、本当に本当に、不運な男だなぁ。オレがジニアスと組んだ理由は戦力の分散のためさ。『取引』をしたのは、お前とアルテミス・・・、いや、デメテルと呼ぶべきかな。ヒッヒッヒッ。まぁ、どちらでもいい。お前ら二人の能力が欲しいんだ。特に『豊穣』の力が必要なんだよ」

オレがまだ、倒れ込んでいるのに、ランは既に戦闘態勢に入っていた。

大精霊の数が多いな。ヨシの精霊も連れてきたのか!?

光のルナと影のシャドウ、無のナイト。

光があるのは有り難い。精霊達は、マクスウェルを中心にランを庇う様に、展開されている。ヨシとは違う使い方。カーテンを纏わせているように、何重にも重なっている。

「この冥界はなぁ、見ての通り、資源が乏しく荒れ地ばかりだ。『豊穣』の力で豊かな大地を、『海洋の王』の力で無数の生命を。オレがお前らの能力を手に入れれば、『全て』を支配できる」

柄じゃ無いが、仲間に噛み付くヤツには容赦はしない。

オレは『海洋の王』であり『酒神』ダイスだろ。

オレはオレらしく。

アイテムボックスから、酒を取り出す。気付けの酒だ。

世界最高純度を誇るスピリッツ。つまりは、オレの魂だ。

「プッハー、気付けの酒は効くね~!!美味い!ラン、待たせた。背中は任せる。オレ達なら出来るな?ハデスを叩きのめす」

「ダイス、調子が戻ったね!でも、いきなり、お酒なの!?」

いいんだよ。コレで。

まずは地の利を得る。

ココはアイツの宮殿だ。どんな仕掛けがあるかわからない。幸い、光のルナと他の精霊達のお陰で、見える範囲が随分広がった。

「クックッ、悪いがねェ、オレも一人じゃ、無いんだ。お前等は幸運だ。滅多に見られるサイズじゃない。『百腕』ヘカトンケイルって知ってるかい?大きい大きい、本当に大きい巨人の中の化け物中の化け物さ。ヒッヒ、ココに居るよ」

話をしながらも、ハデスは冥界の天井にゲートを広げていた。

既に広がっているゲートは無視して、それ以上に広がらないよう空間を歪ませる。どうやら、邪魔が効いてるな。ゲートは、空間の『振動』で防げる。これ以上大きくすることが出来ないみたいだ。

突然、地面、そのものが動き出す。

『ユラアァ――――、グッワァ――ン、グラッグラッグッワァ――ン、グラグラン』

震源地が遠い場所で、地震が起きたようだ。体が浮かぶ程の揺れが伝わって来た。

まさか!?この場所そのものが、ヘカトンケイルか!?

宮殿の形が変化していく・・・・・・。岩山や岩、柱等は崩れたりしている。あまりの大きさにサイズ感が把握出来ない。

オレは天馬ペガサスを呼び寄せ、跨がる。ランも銀弧モントルに乗っていた。

「ラン、オレの後について来い!宙を駆け上がるぞ」

天井すれすれの所まで、一気に駆け上がる。

元居た位置から、三百メートルは高度を上げたのに、ヘカトンケイルの全体像が俯瞰出来ない。

顔の一部、顎の辺りにいたということだけは理解出来た。

山脈をも乗せる程の馬鹿げたサイズだ。

『百腕』と言っていたが、腕は百どころじゃ無いだろう!?

辺り一面の地面・・・・・・、この場合は体か?大小、様々な腕が、生えまくっている。

数万単位だ。数え切れるものじゃない。見渡す場所、全てなのだから・・・・・・。

身体を動かそうとしてるのか、地震の規模がドンドン酷くなっている。

この場所で立ち上がるのは、無理だな。冥界の天井が落ちる。

それにしても、グロいヤツだ。生き物と呼んでいいのか、イマイチ実感が湧かない。

化け物の中の化け物という、ハデスの言葉には同感だ。

黙って、見ててもしょうが無い。

試しに、矛で大きめの腕を削ったら、他の腕三本に捕まれた。体中を『振動』させて、無理矢理、引きはがしたが、一つ一つの腕力も強い。ランが捕まったら、引きはがすのが難しいだろう。

ハデスが遠くでじーっと、見てはニヤけている。

「ダイスゥ、オレはお前とアルテミスが欲しくて欲しくて欲しくてしょうが無い。殺したくて殺したくてたまらないんだ。決して逃しはしない。決してだ」

「ダイス!ここら辺のヘカトンケイルの腕を無力化するから、ハデスを牽制してて」

ランが矢を射りながら、銀弧モントルに跨がり駆け抜けていく。ランの『狩り』はこういう時に、発揮するのか。神速の野生の獣のようだ。

珍しく荒々しい乱射だ。でも銀の弓から飛ぶ矢は全て、相手の急所へ正確に突き刺さっている。巨人の腕に比べて、本当に小さい矢のはずなのに、ヘカトンケイルの腕が止まっていく。フッ、頼りになるな。

「ふぅ、やっっぱり、数が多すぎるね。このまま相手をしても、無駄みたいだ。ダイス、天井へ駆け上がって!僕のとっておきを使う。一気に行くよ!!」

『赤い巨星ペテルギウス、天狼シリウス、猟犬プロキオンよ。勇者の力となり銀河を跨ぐ大三角を描け!』

―――――――――《《《Triangle of Orion/オリオン》》》――――――――――

ランの放った技は、ヘカトンケイルに数キロメートルに及ぶ三角形の大穴を空けた。

ヘカトンケイルの体であろう地面は動かなくなり、全ての腕が動きを止めた。

オレ達は、顔の辺りにいたから、致命傷となったんだろう。

驚いた・・・・・・。これ程、ランが力をつけていたとは・・・。

「アルテミスがココまでやるとは・・・・・・。侮ってたよ。面白くなってきたじゃないか。これはどうかな?『Helm of Darkness』」

そう言うと、ハデスは姿を消した。気配が消えている。

「ラン、注意しろ。ハデスの姿が消えた。この技はさっき見た。気配も消える。警戒しろ」

ヘカトンケイルに、気を取られている間に、ゲートを何十も仕込んでいたのだろう。

何もない所から、ハデスは現れ、ランを死の鎌で襲った。

持ち前の反射神経で、致命傷は避けたようだが、髪と肩が少し削れている。すぐにハデスを捕まえようと空間を歪ませるがまた姿が消えて逃げられた。

「ラン、無事か!?」

「ゴメン。ダイス、心配かけて。大丈夫だから」

綺麗な髪は短くなり、肩の一部は削られていた。肩がやられた左腕は相当動かしにくいだろう。削られた部分は存在そのものが消えている。

ランを球形の水で包み込み、ヨシから前持って渡されていた薬を飲ませる。医療の神の薬だ。効果はあるだろう。すぐに、肩から流れていた血が止まった。少し休ませた方がいいな。ランは十分やってくれた。

天井から、ハデスの声が響く。上を向くと異様な光景が広がっていた。天井には上半身だけの亡者が何万と張り付いている。

ハデスの存在は『闇』自体がソコに顕現しているようだった。足はなく煙のように揺らめき、暗闇との境界線が無い。両目が黒く光り、笑みを浮かべている。

さっき見たときより、一回り大きく見えた。右手には大鎌を持ち、左手は、血塗られたランの髪の毛と肩の肉を持っていた。左手の薬指に嵌めている、黒い宝石のついた指輪がうっすらと赤く明滅し始めている。

「なぁ、ダイス。いいことを教えてやろうか?オレの鎌で髪を、切られるとな。徐々にその魂は死に向かうんだ。アルテミスには、もう逃げ場はないぞ。怒っているのかい?いい顔だな。そういう顔は大好きだよ。ダイス」

ランの方を向くと、ついさっきまで、普通に話をしていたのに、徐々に青い顔になってるのがわかる。激痛が走っているのか。表情を歪め、それに堪えているようだ。

あまりの惨事に息を詰まらせる。―――オレが困惑してどうする。

ランに対する感情は・・・・・・決まってる。

オレは珊瑚のネックレスを貰った時の事を、まだ鮮明に覚えている。

―――必ず、救う。

「ラン・・・・・・。いいか、よく見ておけよ。今から、いいこと見せるからよ。それまで、何とか持ちこたえてくれ。頼むぞ」

「うん。信じ・・・てるよ。僕・・・はダイスを・・・信・・・じてる。精霊よ・・・ダイスに」

「ウウッウッ、泣けてくるねぇ~。オレはこういう悲劇が大好きなんだ。もっと楽しませてくれよぉ」

――――――《Dark Marionette》/闇の傀儡――――――

苦しい表情のランが、不自然な形で立ち上がった・・・・・。そして、操られたようにオレに手を回して、抱きしめてきた・・・・・・。

ランは生にしがみつき、必死に抵抗している。息が荒い。それでも言葉を紡ぐ。

「僕らは、負けな・・・イ」

なんとか、傀儡の技は振り切ったようだ。

そうだな。オレ等は負けない・・・・・・!!!!!

久々にキレたぜ。ブチのめしてやるよ。

ココからは、オレの一人舞台だ。

ハデスの意識をオレだけに向けさせるか。

トライデントを地面に突き刺し、振動を起こす。

大地を割り、岩盤や大岩を作り出すために。

――――――――――《Break Down/大振動》――――――――――

次は、上の亡者共とハデス。

冥界がどうなろうと、オレの知った事では無い。

「おい、ハデス。また隠れたのか?隠れるのが好きな野郎だ。出て来いっていっても、隠れたままだろ?お前を引きずり出してやる」

ゲートが何十と開いている。どうせ、大鎌で攻撃するつもりだろう。

オレに向かって、精霊達が声をかけてくる。不思議と意思だけが伝わった。

ランを救いたい気持ち。反撃をしたいという意思。

精霊達に命ずる。

『オレの力となれ。更なる力をオレに与えろ』

精霊の主マクスウェルを筆頭に、木のノーム、水のウンディーネ、炎のサラマンダー、風のシルフ、無のナイト、光のルナ、影のシャドウが並ぶ。

珊瑚のネックレスが光り、頭にはいつの間にか、銀の王冠があった。

力が、今までとは、比べモノにならないくらい漲ってくる。少し体が大きくなったようだ。

トライデント自体も、太く長く鋭く完全な銀色になり、輝いていた。

精霊達は、皆、祝福している。

―――『精霊の王』の誕生を。

どうやら、念ずるだけで、それぞれが、意のままに動くようだな。

マクスウェル・ノーム・ウンディーネ・サラマンダー・シルフを天体の様に纏わり付かせる。

ナイトとシャドウは闇に紛れ込ませ、ハデスを捉える罠にする。

ランには、ルナをつけて。いつでも居場所がわかる様にしておく。

――――――《Gate》/多重展開――――――

何十ものゲートが大きく開き、四方八方から、凶悪な大鎌の斬撃が繰り出された。

いつも、ケイと訓練しているオレにとっては、遅い攻撃。だが、慢心はしない。かすり傷一つ負わない様に躱す。

ペガサスと精霊と共に、天井へ向かう。動いている軌道には、暴風や炎熱が生まれていた。コレを使わせて貰うか。

重力を逆さにする。

――――――《Gravity Distortion》――――――

亡者共は戸惑っているな。お前らはコレで終わりだ。活躍の場は一切与えない。

――――――《 BigRock Rain》/巨岩の雨――――

燃え盛る巨大な岩や岩盤などを暴風と共に送り込む。

『ガガガガガガガガガッガドドドドドオドドドドドドガガガッガガガドドドドドドガガガガガガガガガッガドドドドドオドドドドドドガガガッガガガドドドドドドガガガガガガッガドドドドドオッガドドドドドオドドドドドドガガガッガガガドドドドドドガガガガガガガガガッガドドドドドオドドドドドドガガガッガガガドドドドドドガガガガガガガガガッガドドドドドオドドドドドドガガガッガガガドドドドドドガガガガガガガガガ』

幾らでも、ココには、岩や瓦礫、山はある。

ハデスは、ゲートに隠れたままなのか、姿が見えない。苛つかせるのが上手いヤツだ。

ランの所に行き、無事かどうか確認する。まだ、呼吸はしている。光のルナと相性がいいのか、魂をすわれる速度が落ちた気がする。ヨシがいてくれて、良かった。

次の行動に出る。

上の亡者共は、つぶれてしまっただろう。

重力をまた元に戻す。

また、ゲートからのろまな大鎌が袈裟懸けに振り下ろされた。

大鎌の柄をつかみ取り、《振動》で粉々にする。

ゲートも見飽きた。同じ手は食わない。これ以上、ランに手出しはさせない。

三つ叉の槍に命じ、再び、この場を海へと変えよう。先ほどとは全く別のスケールでな。

―――――《トライデント》よ、この冥界自体を海水で埋め尽くせ―――――

『ズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァァズズズズズズズズズズズズズズズズザザザアアアアアアアアアァァァァァ』

―――偉大なる海よ。荒波を熾し、我の怒りのまま、大地と共に踊り、大渦を熾せ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~―――――《Maelstrom/メイルシュトローム》――――――~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

オレとランがいる場所以外は、荒々しい海が暴れ回り、大地の割れ目が大渦を作り出す。

海底の連中も呼び、暴れさせるか。海の怪物達が姿を現す。

クラーケンやリヴァイアサン、オピーオーンやケートス等、神話や伝説級の怪物達だ。

ヘカトンケイルの肉は、すぐさま怪物達の餌となった。

ゲートもこうなっては何の意味も持たない。なんせ、冥界自体が海だからな。

どうやら、仕込んでいた精霊ナイトとシャドウがハデスを発見したようだ。哀れなヤツだ。シャドウの作った暗闇でまだ隠れているつもりなんだろうか?

トライデントに回転を加えて、ハデスめがけて思いっきり放り投げる。

アイツは、オリジンだ。体の半身は、吹き飛ばしてもいい。しゃべれるように、頭は残してやった。

「ウワァアアァアァァァァ・・・!!無茶をしやがって、もう冥界が海になってるじゃねーか!!どうするつもりだ!?メチャクチャだろう!?」

「オレの知った事ではない。とっとと、ランの精気を戻せ。万が一が起きたら、どうなるかは想像できるな?」

「す、少し待て、わかった。アルテミスは戻す。ココまでにしてくれよ。勘弁してくれ。なぁ、ダイス。俺を殺しても大した意味はない。何が変わるって言うんだ?俺は冥府の王。冥界はどうなる。誰もオレの代わりは務まらないぞ」

ランの顔に精気が戻る。ふぅ、一時はどうなることかと思ったぜ・・・・・・。

「馬鹿だな。殺す殺すと息巻いていたのは、お前じゃないか。オレはそんな事、一言も言ってないぜ。オレは、お前がいなくなっても一切困らない。死んだとしても、安心していいぞ。『冥府の王』なんだから、別に死んでもいいだろ?オレは興味がないな」

もう、勝てないと思ったのか、ハデスは呆然とただ、立ち尽くしている。今のアイツの顔が一番、『絶望』を上手く表現出来ているな。

ここはもう完全にオレのフィールドだ。

「そろそろ、終わりだ。お前のくだらない野望と『取引』のせいで、オレ達はとんだ目にあったよ。《水牢》にもうお前を捉えたぞ。そして、今からゲートも使う事が出来なくなる。永遠に苦しめ。命は取らない。だけど、死んだも同然だ。最後だからな。とっておきをお披露目しよう。ほらよ。極上の酒をたらふく飲ませてやる。よく味わえ」

―――――永遠に寝るんだ。いい気分だろ?《酔食酔酒》―――――

《酩酊》からの《昏睡》

ハデスは水牢の中で、ゆっくりと浅く浮かび、呼吸をしている。永遠に夢を見るだろう

おっ、精霊達が騒いでいる。ランが目を覚ましたようだな。

ハーッ、疲れた。疲れた。こんな時は、やっぱ、酒だ酒。

アレ?ランが呼んでるな。何だってんだよ。オレはくたびれたんだよ。

「ダイス。ハデスは倒したんだね!ありがとうね!で、でもさぁ、周りを見てみなよ・・・・・・。『冥界』には、今、グレイスとヨシが居るんだよ・・・・・・。二人は宙を飛んでいるから、大丈夫だけど。どう贔屓目に見ても、これは『冥界』じゃなく、全く違う場所に見えるよ・・・・・・」

「そ、そうだな。海もあるし、元々の景色とは随分とまぁ、違うなぁとは思うな・・・。い、いい感じじゃないか・・・」

そう、確かに、ちょっとだけ、ちょっとだけ、や、やり過ぎたかな・・・・・・?

せめて、普通の大地に戻すか・・・。

全て、ただの水に変えた後、大地を割って、大きな川を作った。

こんな程度でいいだろう?

・・・・・・知らん! 後は、誰かが何とかするはずだ。

次へ進む➡

コメントする