37.『空白』での再会

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※ダイス視点

ヨシが『予言』を見て、ケイとジニアスの空間の時間が動き始めたと告げた。

どの位のズレがあるか、時間の計算をするか。

「ヨシ、お前はお前で、ケイ達の空間の時間を計っててくれ。三十秒毎にオレ等との時間差を計算し、参戦するタイミングを計るぞ。後はそうだな、オレが合図を出したらゲートを出す振りをしてくれ。ジニアスの『予知』を狂わせる」

「OK、オレはあっちの時間と『予言』に集中する。他の事は頼むぜ」

そろそろ、出番か・・・・・・。景気づけに、さっき作ったばかりの『黄金の林檎』酒を飲むか。酔狂なオレに『酒神』の能力とは、まさにうってつけ。気に入りすぎて、グダグダしちまう。

ランが、もの欲しそうな目でコッチを見ている・・・・・・。酒の旨さを覚えて、お前も目覚めたか、ハッハッハッ。周りは馬鹿ばかりだな。

ヨシには、戦場の場面を視て貰い、逐一報告を貰う。

あっちの状況がわかれば、手の打ちようは幾らでもある。

ケイとジニアスの感情がそれぞれ強く動くタイミングと、空間が切り替わる場面、それぞれの武器を取り出す場面。そして、『ケラウノス』を使うタイミングが重要だな。

ヨシ曰く、感情の昂ぶりが出ている時が一番視やすいそうだ。念のため、複数のパターンを視て貰っているが、もう、誤差の範疇でしかないという。一番最後は、どのパターンも、ただの『空白』になるらしい。

――やはりな。

ケイが『雷鼓』を取り出したそうだ。天には無数の『雷』だとよ。楽しんでいるじゃねーか。

数回の時間の報告で、大まかなズレは把握した。後は、少しずつ精度を高めていく。

トライデントを振りかざし、あらゆる場所に存在する『水』に干渉する。水たまり程度の大きさでも、役に立つ。頭脳戦といきますか。

「――~~《Vortex Multi Task/渦のマルチタスク》~~――」

折角、人が真剣にやってる横で、ランがまだオレを見ている・・・・・・。

『黄金の林檎』酒をやったら、感激してるな。うわっ、酒の肴をバクバクと食べていやがる。シリアスモードが台無しだ。そういう風に、肴は食べてはいけません!!チビチビとやるから、いいんだよ。全く・・・・・・、風情っていうのが、わかってないな。酒を覚えたてのお子チャマはコレだから困る。酔いの程度も知らんだろうから、酒も氷で割ってやるか・・・・・・。

「ラン、ちゃんと水も飲め。あと、ご飯じゃないんだ。がっつくな。この『冥界』の宮殿の風景を愛でるように飲んでみろ。酔っ払う為に、飲むんじゃ無い。楽しむ為に飲むんだ!!」

フフフッ、風景を愛でるようになったら、後は酒の虜だ!!!

グレイスはグレイスで、ケルベロスをからかって楽しんでいる・・・・・・。質問攻めだ。ケルベロスも素直に答えるから、コイツが喜ぶんだ!でも、ココからはグレイスにも、乗って貰わなきゃ困るな。

「グレイス、ケルベロスをからかうのも、そこら辺にしておけ。そろそろ、頭を切り換えるぞ」

「あら、残念。ヨシとダイスが真剣だから、安心しちゃったわ。ちゃんとコントロールしてね!」

ふぅ~。コイツは確信犯か・・・・・・。素直な女じゃないなぁ。ケイにだけは素直なのに。

「Hey!戦況が動いていくぞ。それぞれ、本命の武器。ケイの顔が悲惨」

――動くか。

「皆、ユウを拾いに行くぞ。準備しろ。アイツの力が必要だ。ヨシ、ユウを回復させれるな?薬は仕込んできただろ?」

「薬は大丈夫。ユウは丈夫。出血多量の大怪我。傷はコウシンに依頼。以来、傷は塞がり、血が足りないだけ。オレが行けば、問題ない。今は寝てるな。行くぞ!」

「――――《Gate》/ユウの居場所――――」

昼間だってのに、ユウは寝てるのか。余程、疲れたんだろう。あの体で大怪我って、『英雄』ヘラクレスも大したもんだ。

『スッ、シャキ――ンッ』

うぉっ、ヨウビさんかよ。焦ったぜ。向こうも焦ったようだな。勘違いしてもしょうが無いよな。ヨシの服が切られちゃったよ。

「ユウの容態を見に来ましたよ。この能力は、ハデスからヨシが受け継いだんです」

「・・・・・・と、とんだ失礼をしやした。皆さんとは・・・・・・。ヨ、ヨシさん、お召し物を切ってしまい、も、申し訳ありゃぁせん。オヤジは疲れて寝てるだけでさぁ。ちょっと血が足りなくなったってコウシンさんが話してやしたね」

ヨシが回復薬を使い、ユウの中の血を増幅させる事をヨウビさんに説明する。

「よぉ、ユウ。お前、大分痛い目に遭ったみたいだな?随分、派手に腹が切られたな」

「えっ?なんでダイス兄がココに・・・・・・、ってケイ以外、皆!?その子は誰だ?」

「フフフッ、色々あってね。ヨシの好きな人?う~ん。両思いの可能性大な子よ!ケルベロスちゃんって言うの」

「えっ?ケルベロスって、あの『地獄の番犬』?」

「『地獄の番犬』は辞め。今はオレがコイツの番犬。そうじゃないと、不安がるから、Knight気取りで行かせて貰うぜ。まずは、ユウの体を治す。この薬、飲め。お前の血を増やす薬。万全にして、ケイの所に全員行くぞ!」

「オゥ、そりゃぁ、ありがてェ!ケルベロスのことは、後でチャンと教えろよ。このこのこのこの。なんか、ヨシの雰囲気が変わったなぁ。う~ん、そりゃぁそうと、どうやってケイの所に行くんだ?」

「単純明快。今、オレは『冥界の王』。その能力で移動する。他の事情は後で聞け」

「なんだか、寝てる間に、凄い展開になってんな・・・・・・。ケイはどんな感じだ?」

「相当感情、揺れている感じ。自分と戦っているかのような葛藤。ササっと着替えてこいよ」

まだ時間はある・・・・・・。ユウとヨシはこのままの状態が一番かな?グレイスも放って置いていいな。ランは緊張感が足りないように見えるが・・・・・・。コイツの場合はしょうがないか。

「わかった。顔洗って、服を着替えてくるよ」

「ケルベロス、お前は火星で待機。必ず、迎えに来る。約束。その時、沢山遊ぼうな」

「わかったぞぇ、わらわは戦え無いからのぅ。この怖いおじさんと待っておるわ」

ふむ。ヨウビさんは怖いおじさんか。ハハッ。その通りだ。

ユウの準備が出来たようだな。いつもの黒スーツか。ワンパターンなヤツ。何着持ってるんだよ!?

「ユウ、ゲートの先頭は、お前が行ってくれ。次にオレが続く。ゲートに入る前に全員に《Aegis/イージス》を球状にして、纏わせてくれ。そこからは、オレに任せろ。ヨシ、ケイは立ち直っているように見えるか?」

「そうだな。何か決意した顔だ。・・・・・・今、『ケラウノス』を使って技を放ったぞ。ココから先は、見えない『空白』だ」

――そうだな。十五分後だな。

「皆、十五分後に、ケイの居る場所に行くぞ。準備は万端にしとけよ」

『おぉ!!』

ランの顔も戦闘モードに切り替わったな。

後、向こうでやるべき事は・・・・・・。

「行くぞ、ヨシ、頼む」

「――――《Gate》/ケイの居場所――――」

◆◆◆◆◆

※ケイ視点

何もない『空白』の中に一つ、漆黒の黒渦が広がっていく。

ハデスのゲートか――。それにしては、雰囲気が柔らかい。

えっ!?ユウとダイスだ。

「よっ!来てやったぞ!」

「おぅ、調子はどうだ?ユウ、ケイにも《Aegis/イージス》を纏わせろ」

どうやってココへ!?

ランも、グレイスも来た。ヨシがハデスの能力を使ってる・・・・・・。何だか、状況がわからないな。

ジニアスは何処へ行った?そもそも、この『空白』はなんだ?

今、オレ達がいる場所は何もない。地面も何もかも。全員、球形の《Aegis/イージス》を纏って、バラバラな位置に浮いている様だ。オレ達の位置を操作してるのは、ダイスだ・・・・・・。

何もない。

――『空白』。

「しかし、殺風景だな。こんな『空白』なんだな。勉強になる。ココは、まだ、宇宙に成る前の場所だ。見てればわかるぜ。 オレの計算じゃ、そろそろ、何だが・・・・・・。あっ、来た来た」

ダイスの言葉と、同時に『空白』が『宇宙空間』へと変わった。唐突に、『宇宙空間』に投げ出された感じだ。

「グレイス、まずは、この場所を《星》にしてくれ。ケイ、大気をもたらしてくれ。後は、皆で土俵を作るぞ」

「えぇ、わかったわ。大きい星にするわね」

「――この場所を巨大な惑星へ!《Star/スター》――」

「――~~地球と同じくらいでいいか《Gravity/重力》~~――」

ダイスとグレイス以外は、何が起きているのか意味がわかっていないようだ。オレもわからないが、言われたとおりに大気を生成出来るか試してみる。

いつの間に、オレは大気自体を、生成出来るようになった?

ダイス、ラン、グレイスが瞬く間に、緑と水と大地のある惑星を作りあげた。ユウとヨシはアホ面だ。オレも含めて呆気にとられている。

「グレイスの能力の使い方は、幅広いな」

「ありがと!私だって、ちゃんと考えているわよ」

頭を切り換え、冷静になり、辺りを見回すと、ジニアスが百メートル程先にいた。

「Hey!!油断するな。やって来たぜ!」

◆◆◆◆◆

――異様な姿。

ジニアスの顔だけをつけて歩く機械人間――。

右肩のあたりから、胸部分まで大きく割れている。他にも複数箇所にヒビ割れがある。

『ケラウノス』での攻撃は、効いたんだな。だが、あの技は、連続では使えないな。

理解した。戦っていたジニアスが作った空間自体を焼き尽くしたんだ。更には、宇宙空間さえも・・・・・・。

アイツの自身の残る部分は後はどこだ?何回技を使える?もう、相当数は少ないハズ。

『ケラウノス』が使えなくとも、勝機はある。皆、ココにいる。

全員、交戦体制だ。この面子で戦う時の陣形は決めてある。

既に『赤鬼』となったユウが最前衛。ダイスとオレが真ん中。ヨシとランが後衛。グレイスが最後衛だ。

徐々に、ジニアスの姿形が元に戻っていく。地球の宮殿で再会した時と同じ姿だ。軍服を纏っている。単なるコンピューターの復元みたいな真似だ。

戦闘開始直後とは、明らかに雰囲気が違う。余裕も威厳もない。顔に怒りと疲労が見える。

「お前らは勢揃いか。小癪で厄介な連中だ!!苛つかせやがって!!!皆殺しにする。皆殺しにしてやる!!殺す!!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!皆殺しだァァァ!!!」

『Earth』から、五十体程の小さな人形を宙に浮かばせた。

「奴らの血肉を食らい、骨も残すな!!バラバラにしてやれ!!」

66666669《Saturn/サターン》66666669

何だ!?アレは?

体長が三十メートル程、いや五十メートルはあるか!?

巨大なオラウータンを灰色の毛にして、黒い翼を持たせたのか!?

ソレが、空から五十匹程、降ってきた。

ソレ等は全匹、畑を耕す道具である『クワ』を持っている。

『キッシャアアァァァアアアアァァァァァァァァ!!!』

雄叫びを上げながら、オレ達に襲いかかってくる。

コイツら全匹に『雷』を落としたが、効いていない。またかよ。『雷』対策してあるの!?厄介な数だな。

「――大盾となり、この猿を阻め!!《Aegis/イージス》――」

ユウが《Aegis/イージス》で全ての巨猿を押し止めた。

巨猿は暴れ回って、《Aegis/イージス》の大盾をガンガンに叩いている。ユウじゃなきゃ、止められないな。

「コイツら、マジ気持ちわりーな。何だよ。グロいよ!口から涎出しまくりじゃん。怖ェェェ・・・・・・。刀持ってくれば、よかったわぁ。ふぅ、愚痴っても、しょうがないしなぁ。少しばかり、時間を稼ぐからさ、コイツらを地面に落としてくれよ。そこからはオレが引き受けるぜ!」

ランとヨシが、数百の矢を浴びせるが、効いていないようだ。即死効果や他の毒矢も混じっているはずなのに。堅い上に、様々な耐性もあるのかよ!?

ジニアスも正面にいるんだ。オレが迂闊に動くべきじゃない。今は状況を皆に伝えるのが先だ。

「皆、話を聞いてくれ。今、宇宙全体の軌道が狂っているんだ。星々は、全て太陽に向かってる。ジニアスは後二時間もすればと言っていた。アイツは全ての天体を無くすつもりなんだ。何とか其れを阻止したい」

「おい、ケイ、大体、何分前の話だ?」

「二十分は経ってると思う。オレには正直、どうすることも出来ない・・・・・・。考えも浮かばない・・・・・・」

「わかった。少し待て」

「――~~《Vortex Multi Task/渦のマルチタスク》~~――」

「――――作戦立てたぞ。役割分担と行くか。優先すべきは、天体の軌道修正。ジニアスとの戦いは二の次だ。オレが全天体の軌道計算をする。ランとグレイスは協力して、ココにもっと山脈や、自然を作りあげてくれ」

ダイスが酒の瓶を取り出し、飲み始める。酔っ払いが頼もしいとは、不思議だ。

「ケイは天空にできる限りの仕込みをしろ。終わったら、ヨシから回復薬を貰って少し休め。酷い顔してるぞ。ヨシとユウは猿共を血祭りにあげろ」

ジニアスはどうするつもりだ?何か案があるのか?

「オレの計算が終わり次第、グレイスとヨシで、その場所へ天体を戻せ。出来るはずだ。人が住んでいない天体の幾つかは駄目になるが、今出来る最善が、この作戦だ。後は追って指示を出す。いいな」

「その間、ジニアスはどうするんだ?アイツだって黙ってないぞ」

「大丈夫だ。あの猿共を出した時点で、既にオレが相手をしている」

振り返り、巨猿達の向こうを見ると、九つの頭を持つ竜がジニアスと対峙していた。

―――― ふっ、本当に頼もしいヤツ。

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