※ダイス視点
皆、いて良かった。ジニアスの事も共有しよう。
――全て計画通り出来る。
ランとグレイスか、それぞれ表情が違うな。ヨシは、ユウを連れてくるだろう。後はケイを呼ぶだけ。
振動を使い、声を響かせる。――《共鳴》。
『全員、森林と山の下に集まれ!!集合場所の目印に、上の空間を歪ませる。その真下にすぐに来い!!』
「ラン、グレイス。馬鹿デカいの作ったな。驚いたぜ。お疲れ」
「そうでしょ!僕頑張ったんだよ!」
「コ、コレで良かったかしら・・・・・・?やり過ぎかなと思ったんだけど・・・・・・」
「いや、オレには、好都合だ。問題ない。ありがとう」
グレイスは常識があるな。やり過ぎに感じるだろうよ。ランは・・・・・・元から残念な子だ。しょうが無い。
ケイも来たな。コレが、『光』速ね。もはや、瞬間移動じゃねーか。残像すら見えやしない。
うぉっ!
・・・・・・少し、焦ったぜ。ヨシの仕業か。地面にゲートを作って登場とは。ヨシもユウも格好つけて、両腕を組んで、ポーズを取ってる。いいコンビだ。アホだな。うん。アホだ。
全員、来たか。依頼してた事は済んだようだな。
「全天体の軌道の計算は、終わっている。後はグレイス、ヨシに任せる。今から、十二分後だ。ジニアスは、今、足止め中だ。ケイは直接、対峙したからわかると思うが、アイツの能力は、体の生身部分が対価となる。心臓、脳、脊髄、舌しか残っていない。体の構造上、脳と心臓は使えない。脊髄と舌を対価に能力を使うはず。後二回。規格外の技だろうな」
ふぅ、勝負所だ。酒樽ごと出すか。オレが作った酒。銘は『神々の願い』
『ズドンッ、バシャンッ』
「大詰めだ。この闘いで全員揃う最後だ。一盃ずつでも、飲もうぜ」
「オレ等の願いを叶えるぞ!!!」
『オオォ!!!』
時計を見る。
そろそろ、グレイスとヨシには、準備させなきゃ駄目だな。
「グレイスとヨシは、行動に移れ!お前らしかやれない。頼む」
「OK!!オレとグレイスに任せな。Greatに決めてやる!!」
「私も本気でやるわ。失敗は許されない。ヨシ、行くわよ。この山の山頂にゲート移動しましょう。皆、またね!」
「――――《Gate》/山頂へ――――」
「話を続けるぞ。ユウ、《Aegis/イージス》を全て、ケイに注げ。ランは、オレに精霊を全て預けろ。グレイスとヨシが天体の軌道を戻したら、即、お前らは合流するんだ。その後は、ヨシのゲートで火星の屋敷に戻れ。軌道を戻すまでは合流するなよ。アイツらに、集中させるんだ。わかったな?」
「――あぁ、わかった。悔しいが、ダイス兄の指示に従うよ。しょうがねェ・・・・・・。足手まといにしかならねェからなァ・・・・・・」
「僕も、わかった。ユウ、僕のモントルで一緒に行こう」
「ユウ、足手まといじゃない。鍵は、お前だ。ケイに気付かせてやれ。本当の自分を。今のままだと、ケイは勝てない。ケイもユウ達に着いていけ」
ケイは、このままじゃ勝てない。今の時点なら、オレが一番強い。ケイを一方的に出来る程、差がある。だが、恐らく、ジニアスを倒せるのは、ケイだけ。まだ、オレの推測の範囲だがな。
歯がゆいな。鍵となり得るのは、オレとユウか・・・・・・。
世話の焼ける弟だ。
◆◆◆◆◆
※ケイ視点
今のままだとジニアスには勝てない、とダイスはハッキリ言った。ダイスは、こういう場面では、根拠のない事を言わない――。
「ケイ、コレを見ろ」
ダイスが自分の頭を指す。いや、頭ではない。
――『銀の王冠』。
「お前には『王冠』が無い。必要な力が、全て備わっていない事を意味する。ヨシ達と合流する時までに、頭に『王冠』が無いなら、そのまま、皆と一緒に屋敷に戻れ。闘いにならない。『王冠』が無いなら、二人でやるより、オレ一人の方が、やりやすい」
「ダイスはどうなるんだよ!?」
「オレは、成るようになるさ。幸い、『精霊の王』でもあるからな。宇宙空間でも平気だ。ヤバい時は、死にもの狂いで逃げる。ハハッ」
・・・・・・オレに何が足りないんだ。
「ジニアスは、『時空』や『時』の神。『原初』の神。クロノスだ。オレ達の能力であるゼウス等のオリンポス神の前世代は、巨人族が神だった。アイツも追い詰められている。オレは押さえられるだけ押さえる。ケイ、待ってるぞ」
ダイスは立ち上がり、天馬ペガサスに跨がった。ジニアスの所に向かうんだろう。
「行くとするか。ケイ、お前、勘違いするなよ?お前はオレからすりゃ、昔のままだ。ただの平和な夢を見る、音楽好きのノホホンとした小柄な弟だ。またな!皆」
ダイスは、オレとユウ、ランを残して、空を駆けた。
◆◆◆◆◆
※ヨシ視点
Oh!!なんて、Giganticな山。空気、薄すぎ。ガン!とかますか。
グレイスは、頂上で、位置と方向確認。椅子に座って、比較的、ノンビリ。
人の『命』は『女帝』次第。オレ次第。ある程度、何をするかは先読みしている。決めている。
「ヨシ手伝って、頂上を中心に、この鉱石を二メートル感覚で運んで、円を作りましょう。ココを砲台にして、この星を他の天体から離せるだけ、離すわよ。後は、私とタイミングを合わせてね!軌道修正と行くわよ!」
・・・・・・力仕事。デカい鉱石。頑張れば偉い功績・・・・・・のハズ。見た目よりは結構、軽い!手筈通りに出来るハズ。残り十分程度で、周囲を囲める?
グレイス、スイスイ運んでる・・・・・・。力持ち。オレ一個、コイツ五個。いつの間にか完了。後三分間。簡単には、行かないな。勝負はココから!!
グレイスの周囲に、『黄金の林檎』が沢山!?
「じゃあ、全天体に干渉して止めるわよ!!!」
「―――星よ、止まれ!!!《Stop! All The Stars》―――」
行くぜ!繋がっていく点と点、線となり、円となり、縁になる
『光』のRing、オレのリング、Starとlink、feat.グレイス!!!
「―――ブっ飛ばすぜ!!!《White Hole》/ホワイトホール――」
Just a Perfect Time!!!ヤレ!!!グレイス!!!
「―――『元の軌道』へと戻りなさい!!!《Return to orbit》―――」
――Mission completed。
軌道修正、完璧。一安心。
『光』と『闇』、アポロンとハデスの能力のコラボは、中々コントロールが難しい。
Shit!グレイス、倒れてる!疲労困憊!顔真っ青!
「コレを飲め。最高の回復薬。体力を戻せ。星々は元通り。人々は安心。お前のお陰。グレイス、Excellent」
「成功ね!よかったわぁ~。予想以上・・・・・・、疲れた。怠いわ。『黄金の林檎』に、まめに力を貯めて置いて、よかった。ぐったりね。回復薬を飲んでやっと立てるくらい。少し休ませて頂戴。横になるわ」
『女帝』様は、マジAmazing。ふっ、あぁ~。
◆◆◆◆◆
※ケイ視点
グレイスとヨシが天体の軌道修正を成功させたみたいだな!
コレで、闘いに集中出来る。
グレイスは、相当、疲労してるみたいだな!?
「大丈夫?あ、はい、敷物。ココに横になりなよ。二人共、お疲れ様!」
「ありがとう。ケイ達は見てたの?」
「うん。集中して欲しくて、遠くで見てた。邪魔して失敗したらヤバいだろ?」
グレイスは話をするのも怠そうだから、今はそっとしておこう。
「皆、ちょっとオレの相談に乗ってくれ」
ダイスは、ユウが鍵だと言った。まだ、オレにはわからない。足りないモノが・・・・・・。
「アレだろ?ダイス兄が言ってた事だろぉ。オレもさぁ、鍵って言われてるからずっと考えているんだけどなぁ」
何か、この感じ。前にも、一回味わったな。コウシンと試合をした時だ。
『ケリュケイオン』の杖で、メチャクチャにされた時と同じ感じ。
「僕わかった!ケイは、小っちゃいんだ。だって、ダイスって背が大きいでしょ。ケイの身長は、僕が背伸びすれば簡単にこせるよ!」
・・・・・・この馬鹿がぁ。身長はしょうが無いことだろうが!生意気なので、チョップを何回も食らわせてやった。
「はははっ、ランはウケるなぁ。面白い奴だ。はははっ!」
ユウは、笑っているがお前もオレと同じ位の身長だ。オレ達の家系は小さいんだよ。
「結構、簡単な話なんじゃねェ?オレは幾つか、思い当たって来たわ。ドンドン、試していこーぜ!まずは、そうだな。ケイの『能力』を全て解除して、ココに立ってくれよ」
なんだ!?ユウは若干、確信めいた雰囲気で話をしているぞ。鍵がコイツだからな。言うことをきくか。
「ココから何するんだよ?ユウ」
『ブォンッ、ドォ――ンッ』
ひ、酷い・・・・・・、殴られた・・・。ハッ、ハァハァハァ・・・。痛ッてぇ・・・・・・。マジ痛い痛い痛い・・・・・・。
「おま、おま、お前何するんだよ!!!いきなり、無防備の兄を殴るか?普通。い、今、オレ、宙に浮いて飛ばされたぞ!?こんな痛てーの、久々だ!」
「そうそう、そんな感じ!いいね!成功。ケイはそんな感じだよ。コレでも、手加減しまくりだからな?ただ軽く腹をド突いただけだろ?『赤鬼』状態でもないから大丈夫だ。ハッハッハッハッ!何か掴んだ?」
「何もわからん。腹が痛てー・・・・・・」
「マジ?その反応・・・・・・。こりゃあ、重傷だな。うーん。ダイス兄が言った事、覚えてるだろ?ケイは、やっぱり、勘違いしてるよ。オレは答えがわかった。確かに、オレが鍵だな。あと、ダイス兄もだ」
んん・・・・・・、腹は痛いが、ユウは至って真面目だ。ダイスも鍵?
「ここにいるメンバーも十分、鍵になり得る。ダイス兄は、オレって言ったけど、まぁ、それはオレが生まれた頃から一緒だからに過ぎないよ。どう、伝えれば、わかりやすいかな。ちょっと待って・・・・・・・・・。うん。ケイ、能力を持たない頃の自分と、今の自分を比べて見てよ。何がどう違う?」
昔のオレとの違い!?
「すまん、どうなんだろうな?いまいちわからない・・・・・・」
「ホラ、この時点で駄目。『能力』を持つ前のケイだったら、即答か、もっとマッタリとした反応だよ。ケイは本来、極端だから。今みたいに、迷ったりしない。変な所で謝ったりもしない」
確かにそうだ。
「オレの知っている本来のケイについて話すぜ。面倒くさがりな所があるけど、興味を持つ分野には即決即断。他人の意思を無理矢理変えようとする人柄じゃない。自由奔放で、人任せ。天真爛漫。動物で例えると、猫みたいな気分屋な所と一匹狼みたいな一人でいる時間を求めるマイペースな兄貴。調子に乗るとトコトン乗っちまうのが悪い癖だ。楽器で例えると、ケイは昔からリズムキーパーだ。性格に直結してるぜ。音楽のテンポも自分で変えるんだろ?意味がわかるか?」
――理解。
オレは、『ゼウスの能力』に飲まれているんだ。『主神』って言葉の響きや、『ケラウノス』の力に酔ったのか。
ユウの言うとおりだ。
いつも、乱暴なユウを怠いなぁ思いながら、相手していたじゃないか。
殴られたら、怒り返すのが日常だった。
パーカッショニストでもあり、ドラマーでもある。マイペースなリズムキーパー。
ずっとそうだった。ぼんやりと夢を描くのが好きで、自由を求める。
ずっと、オレのテーマは同じ。
――《愛と平和と自由》
気負いすぎだな。オレ。打楽器奏者としては、失格だ。全部、流れの中にあるんだろう?半分、適当。半分、真面目。最近のオレは何者だ?格好つけてるのか!?
「ユウ、お前は、最高の弟だぜ。アハハッ!自分でも面白いわぁ。お前の指摘当たりすぎだ。確かに大きい勘違いだな。本当のオレはいつも、自己満足で生きるような奴だ。アハハハッ、もう、理解した。安心しな。見てろ。調子に乗ったオレの姿を!!」
大地の鼓動が、オレの心臓と同期する。天空に拡がる、何処までも続く綺麗な青空が見える。イメージは変幻自在に、宇宙の端から端へとランダムな形のパルスを送る。タイミングは雰囲気が、教えてくれる。
一つの大きな流れの中に『全て』がある。
――そして、今がある。
「どうだ。似合ってるか?」
「アハハッ!ケイ、最高だぜ。よく似合ってる。その『黄金の冠』」
「うわ~、ケイ、まるで本当の王様みたいだよ!」
「そうね、ケイは素の自分を取り戻したのね」
「Oh!!Coolだぜ。リズムキーパーがグダグダじゃ誰も踊れない。オレもそれならハデスの能力が板についたら、『冠』がつくんだろうな。ケイがその状態なら大丈夫だ。オレ等はもう、火星に戻る。その前にオレからお前に送るぜ。魔法のSpell。ありったけの力」
――世界はオレ等の手で切り開ける!《The world is in your hands》――
オレの外套が『光』となる。『光の領域』は完全となる。
「じゃあ、次は、オレからの贈りものだァ」
――赤き守護神よ、ケイに宿れ!《Aegis/イージス》――
《Aegis/イージス》が心臓を守るように胸当てとなる。『怪力』までもが宿る。
「それじゃあ、私も贈りものをするわ」
――《Love Kiss》――
数瞬ほど、唯々、『愛』が聴こえた。
この場の皆が赤い顔をした。初めてのキス。
――こりゃ、誰でも照れるだろ!?
「え~っと、ぼ、僕は・・・・・・、う~ん。うぬぬぬぬぬぬ・・・・・・・・・。皆、ずるいよぉ~!ハードルが高すぎ!!グレイスの後は、僕には荷が重いよぉ~。・・・・・・絶対帰ってくるって信じてるよ!!帰ってきたら、美味しいモノを食べたり、お酒を飲んだり、面白いモノを見に行ったり、一緒に遊ぼうね!色々、考えておくよ!」
「それじゃあ、行ってくる!またね!」